| 松井: |
21世紀のリーディング産業は観光だと言われています。昔は物見遊山で出かける観光でしたが、現在は体験型に変わりつつあるようです。
それに伴い地方がクローズアップされ、この富山でも「富山ブランド」の確立を進めていく必要があります。富山の観光資源を生かすも殺すも、そこに住んでいる人の意識であり、感性です。今回は、この富山に住む4名の方にお集まりいただき、意見を交わしていただきたいと思います。
まず、前出の「街なか観光振興のためのアイディア募集」についての意見をお聞かせください。 |
| 吉田氏: |
私が富山に来て最初に思ったことは、「あまり遊ばない人たちだなぁ」ということです。先ほどのアンケートで娯楽施設があまり出なかったのも県民性なのかと思いました。
立山や薬の歴史、海の幸山の幸に恵まれているから、あまり遊ばなくも良いのでしょうか。たしかに立山を見ているだけで癒される経験が私もあります。 |
| 山下氏: |
私は池田屋さんと「富山観光創造会議」をやっているのですが、富山には観光客を引きつける強力なインパクトが無いのではないでしょうか。その街に行ってみたいと思うためには強いストーリーが必要だと思います。その点では、健康と薬がストーリーになりえるのではないでしょうか。 |
| 古川氏: |
私の会社では調査を専門にやっていますが、街づくりにおいて、いつも抜けている視点があると感じています。それは景観を考えて街並みや店づくりを計画しているのかということです。みなさんがおっしゃるようにこの街から望む立山の姿は、富山のすばらしい財産です。その景観を活かして駐車場や商業施設をつくってほしいと思います。 |
| 長尾氏: |
私は、60才以上の方をもっと対象者として増やしたら良いのではないかと思いました。高齢者には若者とはまた違ったノウハウと知恵があります。
街なか観光と商店街の関わりについては、きちんとストーリーをつくった上で、商店がそのストーリーにのっかっているかということが重要です。いくら市や県が観光を打ち出しても、商店1店1店が地元の人だけ対象にしていたのでは、全く効果がありません。 |
| 松井: |
最近では商店街も問題意識が出てきたようです。 |
| 古川: |
根本的な話ですが、全国の賑わっている商店街の例を上げてみると、1,人口80万人以上の大都市の中心商店街、2, 「おばあちゃんの原宿」といわれる東京・巣鴨地蔵通り商店街のような高齢者に特化した商店街、3,滋賀県の「黒壁」や長野県の小布施町のような観光都市の商店街の3つに分けられます。
富山市は1にもあてはまらないし、2にも無理がある。やはり観光に力を入れる必要があります。
今の富山市の中心商店街はターゲットが若すぎるのではないでしょうか。
これから団塊の世代が定年になり、観光や買い物に多く出てくると思います。この場合、「心からのおもてなし」の精神が必要になります。そこに街並みの美しさが揃えばさらにすばらしい観光都市に成長できるのではないでしょうか。 |
| 松井: |
「心からのおもてなし」そんなお金のかからないことから1歩ずつ進むことが大切ですね。 |
| 山下氏: |
池田屋さんの歴史が、この観光の実践の例ではないでしょうか。一昨年は9万人、昨年は10万人がいらしています。街中でこの数字は驚くべきことです。
長浜の例では、商店が次々と業態を転換させて観光業に生まれかわっています。衣料品店がおみやげ用にちりめんのぬいぐるみを店頭に置く、水引の店が観光者向けの竹細工商品をつくるなど、あらゆる商店が観光客にターゲット合わせています。
これは、何も明日から違う業種に転換するというわけではなく、おのおのが今ある技術・ノウハウを磨き、自分の業種内でできる範囲で観光客に喜んでいただける商品を提供するということです。観光とは今ある宝を磨くことだと思います。。 |
| 吉田氏: |
私がお手伝いしている街なかサロン内のキッズコーナーでは子供の一時預かりが主な仕事なのですが、おかあさんたちの憩いの場ともなっています。そこからはいろんな要望が出ています。その希望を少しづつ聞き入れていくことが大切なのだと思います。これは私たちがお客さんのことを一生懸命考え、何が本当の要望なのか考えないと的はずれなサービスになります。先ほどの池田屋も、薬屋さんから観光施設に移行していくには様々な設備が必要で迷われたことと思います。しかし見えない場所に気を遣う姿勢、しかも大きなトイレがまず必要だと考えられたのはすばらしいですね。 |
| 松井: |
昔からみれば、商店街からどんどん人が少なくなってきています。それは、お客様の必要とされているものが中心市街地から無くなってきたからではないでしょうか。このもてなしの心の大切さを再認識したいと思います。
さて、4月から富山市が合併されますが、これと観光をどう結びつけていけば良いのか、ご意見を伺いたいと思います。 |
| 山下氏: |
観光は富山市を起点にしてもらうことが重要です。
市内中心部のホテル、旅館から県内の観光地に足をのばしてもらう工夫、例えば立山アルペンルートの出発点は富山市に置く、というようなことです。 |
| 松井: |
合併によって、富山市の中心部はもっと努力が必要ということですね。 |
| 古川氏: |
私の個人的な意見ですが、市町村合併の議論が進む中で、一番のんびりしていたのが富山市ですね(笑)。他の町村はもっと必死です。自分たちが今まで大切にしてきた資産を、中心部に持っていかれると感じているのでしょうか。その愛着心が富山市民にはもっと必要だと思います。
今までの富山では、新しい大型店が進出してくると、多くの人がそちらに流れて地元の店が衰退していくという傾向があります。地域を愛することは、地域の商店も愛することだと思います。これからは、多少不便だろうが、市民自らが地域の商店を進んで利用しなければ、地元のお店はなくなりますよ。 |
| 松井: |
地元のものを愛する気持ちは大切ですね。
富山県人は浮気性なのかな(笑)。 |
| 吉田氏: |
たしかに富山の人は新しい物が好きですね(笑)。今は地元の人が手をつなぎ、自分の街に誇りを持つ時ではないでしょうか。 |
| 長尾氏: |
市町村合併によって、観光資源が広がりを持ちます。これを街なかにどう結びつけていくのかが課題ですね。先ほど、池田屋さんのお話でもありましたように「みちの駅」を通してくすり・あめ・おかし・酒の駅と広がりを持たせているように、いろんなお店のこだわりを広域的にPRしていくことが大切です。これはとても難しいことですが、もし簡単にできることであれば誰でもできるんです。これこそ執着心を持って実行していかなければなりません。PR誌はスタートです。各お店が情報を共有して、観光客に働きかけていくことこそが実行と言えます。 |
| 松井: |
今回制作した「幻の延命水」という富山の名水を紹介する冊子も、つくってって終わりではなく活用していくことが大切ですね。富山市は、観光情報を発信していくターミナル的な役割になりそうです。
最後にパネラーの方々から「街なか観光」定着のためのキーワードをお聞かせいただけませんか。 |
| 古川氏: |
私は4Cを提案します。
「カスタマバリュー」、これはお客さまから見た価値をつくっていくことです。それから「コンビニエンス」、便利さです。そして「コスト」、最後に「コミュニケーション」としておもてなしの心の大切さを提案します。
それからネット社会になっているのでITの整備も課題です。
富山に必要なのは、チャレンジ精神、ホスピタリティ、そしてラブ(笑)と言いたいですね。 |
| 山下氏: |
私も4つ提案します。「あるがまま」、これは薬と健康などまず自分たちの持っている財産を生かすということです。
「景観」美しい立山と町並みをマッチさせ磨いていくことです。「公共交通」これが富山のストーリーづくりに貢献できると思います。公共のバスや電車を使って、歩ける観光をしてほしいですね。もう一つあえて申し上げるなら「ストーリーづくり」、何度もこの街を訪れていただくための観光戦略が求められています。 |
| 吉田: |
富山というと癒されるイメージがありますね。ここから「健康・薬」「おいしい水」「立山」をうまくPRしていって欲しいと思います。 |
| 長尾氏: |
私は「コーディネート」だと思います。今求められているのは編集する力がある人をバックアップしていく体制を整えることです。出る杭は打たれると言いますが、拠点や単位毎ではなく「ストーリーをつくり売る」、それを誰かではなく自分がやるんだという気構えのある人を育てましょう。
次に「プロモーション」です。新しい旅行者を増やしていくためにはマスメディアを使い、映画やドラマの撮影場所として提供していくことが有効です。地元を愛する心でPRしていきましょう。
最後に「街」です。地域が連携し、もてなしの心を持って観光者に接していくことが、地元の活性化につながります。
富山には良いものが無いとみなさん言いますが、少し鈍感になっているのではないでしょうか。よその人との人的交流によって発見でき、磨かれることはたくさんあります。ぜひ心に富山の誇りを持ち、街に出て考えてください。 |
| 松井: |
我々はややもするとあまりにも恵まれすぎて鈍感になり、外部の人の声を軽く聞き流しているのではないでしょうか。観光は「よそ者との交流によって磨かれ、新しい文化を生み出す活動である」と言われています。そういう意味で、我々ひとり一人が日頃からいわゆる「よそ者」の声をもっと敏感に捉え、身近にある資源を今一度見つめ直し、磨きをかけて自信と誇りを持って内外にアピールしていく必要があるのではないでしょうか。
本日は貴重なご意見をいただき、ありがとうございました。 |