中心市街地活性化協議会 まちづくりフォーラム 2004年 2005年意識調査の結果報告まちづくり工房

会 期  平成16年2月21日(土) 13:30〜17:00
会 場  富山国際会議場
 街を変えるのは、「よそ者」「若者」「みゃあらくもん」とよく言われますが、言い換えれば、「新鮮な眼、若いエネルギー、豊かな個性を持つ者が街を元気にしていく」ということだろうと思います。そこで、今回は、「よそ者」に光をあて、富山で生活する県外出身者の視点から「富山の良さ=価値」について語り合ってもらう中で、街の魅力を再発見し、「元気な街とやま」の実現を図ろうとするフォーラムを第1弾として開催しました。
第1部 基調講演|第2部 パネルディスカッション
 

■第1部 基調講演「価値資源を活かすまちづくり戦略」
みなさんこんにちは。今日は肩の凝らない楽しいお話をさせていただきたいと思います。
私は富山に来て 5 年になります。いわば富山の人にとっては「旅の人」であり、よそ者なのですが、そのよそ者の人は富山をどう見ているのか。そんなことをお話しながら、このフォーラムが終わった後に少しでも街の活性化を考えていただければ幸いと存じます。

まちづくりに必要な 3 つの要素(人、企業、地域)。
私が初めて富山に来た時に、部屋を探すためにやったことがあります。それは地図を買ってきて 3 つの円を描くことなんですね。自分の生活に必要なもの、ひとつは職場の「大学」、そして出張が多いので「駅」、様々な書類を提出するための「県庁や市役所」。この 3 つの円が交わった所を住まいとしました。
利便性の優れた場所(地域)に住むことによって、その場所の「よさ」と「悪さ」を知ろうと思ったのです。今日のお話はこのような視点から、普段感じていることをお話してみたいと思います。
そもそも地域を構成するのは「人」と「企業」です。
まず、人に必要なのはがんばっていこうという目標。ボランティアでも、後継者がいないと続かないのです。企業には利益が必要です。どんな事業でも利益が出ないと継続できません。そして地域には、ここに住んでいるとこんな良いことがあるよという「夢」が必要です。この 3 つ「人には目標を、企業には利益を、地域には夢を」それを与えることが今後のまちづくりの目標となります。

まちづくりのアイディアの出し方。
まちづくりを具体的に考える場合、よその土地を例にすることでわかりやすくなると思います。
人は知らない街に行くと「どうしてだろう」と思うことがたくさんありますよね。例えば、アメリカのシアトルに行くと、ビルの土台が細いアーチ状になっている建物があります。地震国の日本では考えられないような建物なんですが、このような「どうしてだろう」という現象は世界各地で起こっています。それをなぜかを考えて、地元の人に話しかけていくと、意志の疎通が始まります。実はここから新しい発想が生まれてくるんですね。知らない、わからないと済ますことでは何も生まれてきません。
私が富山に来て思ったことは、人口 32 万人の都市だと聞いていたのに、実際の街を見てみると 40 万人都市のつくりかたをしているんですね。道路や公的機関もとても広く余裕があります。これは冬に雪を脇に置くためなのかな、と考えたりもしていますが、いろいろ想像をかきたてられて面白いです。
人は非日常的な空間に置かれると脳の活動が活発になります。
新しい発想というものは会議だけではなかなか生まれません。九州の人と話をすると「富山はシンポジウムばかりしている」と言います。福岡はお祭りばかりやっているんですね。福岡が比較的元気なのは、そんなところに秘密があるのではないでしょうか。

人口の推移から、マーケットを読む。
富山市の人口の推移をみてみると、富山市のマーケットなどが見えてきます。
人口分布からは、若い人が中心部から離れ北や南側に移っていることがわかります。しかし交通機関は依然、富山市中心部に寄っています。これは北や南に住む人々の重要なマーケットを逃していることを意味しているのではないでしょうか。
年々高齢化が進む中心部。この中心部にある商店街がどの年齢層をターゲットにするかは、重要な問題となります。ハード中心の商業近代化が必ずしも成功のカギとはなりません。
 
ゴーストタウンから通行量 400 万人の街へ
アメリカの TMO の原型となったサンタモニカを例にとってみましょう。
これは空間を変えることではなく、「しくみ」を変えることが成功のカギでした。
日本とは文化が違うので、そのまま当てはめることはできませんが、まず人を集めるための「装置」として映画館をつくったんですね。するとレストランなどができやすくなりますが、放っておくと混乱状態になるのでこれを規制しました。
そうしておいて、人が寄って来ると次にオフィスをつくるというルールを決めたのです。
殺伐とした街にならないように緑を増やしたり、パフォーマンスを行うことで楽しさや豊かさも演出しました。
その結果、ゴーストタウンだったような地域が、年間 400 万人もの人を呼ぶ街となったのです。

大型ショッピングセンターの戦略
あるショッピングセンターの戦略を紹介しましょう。
まず新店舗がオープンすると、経験則から売上は 5 年弱で落ちてきます。そうなると増床を行って売上を維持します。しかしその効果も 4 年程度しか続きません。
これがだめな場合、業態の転換をします。
それでもだめな場合「同一都市圏内に移築による増床」を行います。
その際店舗はストックとしてではなく、フローとして扱います。要するに、すぐに移転できるように建物にお金をかけないんですね。

商店街はどうすれば良いか。
各事例をお話してきましたが、重要なのは富山市中心部のことですよね。ではどうすれば良いのでしょう。
私に自由な意見を言わせていただけるのなら、まず病院をもって来ましょう、ということです。先程の話のように中心部は高齢化が進んでいます。高齢者にとって必要なのは何かを考えなければなりません。
その上で健康福祉関連の施設を充実させていくことも大切です。
また動物を飼う方も多いので、ペットショップなども良いかもしれません。
これは人を集める「装置」です。
次に住居ですが、これは「高層マンション」と「低層アパート」をつくる方法、 2 通りが考えられます。私の意見なのですが、失敗しないやり方として学生のためのアパートを用意したらどうでしょうか。若い人が住んで通りを歩くようになると街が活性化します。喫茶店やカラオケの店も必要になりますし、車を持っていない学生もいるので電車やバスを利用することになるでしょう。
これが高層マンションの住人だと、車で郊外に出かけてしまいますので、住居は同じ場所でも生活空間がまったく違ったものになり、マンションと商店街が分離してしまいます。人を「回遊」させる工夫が大事です。
今、“(株)まちづくりとやま”さんは若い人に活躍の場を与える事業をされています。それに付随して、街に住んでもらうことができたらよいのではないでしょうか。
そこで、若者の生業(なりわい)が生まれれば、人に目標が生まれ、地域に夢ができます。商店街には利益が発生します。

観光事業は商店街に何をもたらすのか。
今、観光産業が大きなマーケットになっています。これは大きな利益を生みますので、商店街としても観光に積極的になる必要があります。
そのメリットは、富山の価値資源を活用できるということです。次に、大きな雇用を生みます。そして、関連企業が多数生まれることです。
実は、この「観光の関連企業」というのは、他の事業では考えられない程多岐にわたります。
例えば、家電製品の製造工場を誘致して、もし商品がヒットしても儲かるのは家電メーカーだけです。
しかし観光産業は違います。
まずホテル・旅館はもちろん、エージェントが儲かり、おみやげ屋さんが儲かります。
この富の分配と地域に対する波及効果は大きいです。
ある特定の人が儲かれば良いのか、みんなが少しずつ儲けて地域を明るくしていくのか、どちらを選びますか。私は後者の方が良いと思います。
 
 
富山の価値資源「食文化」を考える。
私たちが富山に来ると、まず食べ物がおいしいと思います。
先日、私はよそに住む友人にこんな質問をしました。
「富山は、なぜ冬に観光客が来ないか知ってるか」
「雪が多いからかな」
「いや、富山県人は冬の寒ブリがあまりにうまいので、よそ者を来させないように、人工的に雪を降らしているんだ」という冗談をいいました。
その友人は、さっそく今晩富山にやって来る予定です。
富山の人はそれが日常なので、ありがたさが実感できないのかもしれませんが、本当においしい食べ物がたくさんあります。
米などは皇室に献上されたというほどの味ですし、またコンビニのおいしいおにぎりは富山米を使っています。この貴重な財産をもっと宣伝できないでしょうか。もったいないことです。
また、全国の家庭で良く買う食品リストを調べると、魚介類では、ブリ・タラ・イカが上位に来ています。これは富山県が優位ですよね。そして意外なところでカツレツというのがあります。これなども利用しない手はありません。ちょうど呉羽山に活断層があるので「カツ丼層」というネーミングで売り出したらどうでしょう。楽しくポジティブに考えることが発想の源となります。
そうすると飛騨牛や能登牛の産地とも連携しよう、というアイディアも出てきます。

富山県人、なぜ「○○」を活かさない。
「○○を活かそう」という○○の中に入る言葉を考えてみましょう。
たとえば、地域の「物語」を活かそうです。
商店街もこの物語を考えたらどうでしょう。 1 店 1 物語です。それを店の前に展示すると楽しいですね。歩くだけでその商店の歴史がわかります。中高校生の教育にもなります。
そこで必ず反対する人が出てきますが、ここでの話し合いが意志の疎通につながり、文化が生まれるんですね。
そして○○の中には「逆手」も入ります。
利賀村は、人口 1000 人を切っているのに、年間 40 万人の観光客が訪れますが、しかもその半分は視察だそうです。多くの VIP が利賀村で顔を合わせ、そばを食べながら、あるいは舞台芸術を観ながら話し合ってるんですね。ですからクオリティの高い情報が集まるのだそうです。それは貨幣価値に置き換えられない波及効果があります。若者が次々と仕掛けるイベントに、お年寄りがわくわくと期待をし、輝き出します。
地域の活性化は人に始まり、人で終わるのです。

柳井流「富山の○○を活かす」方法
●富山にはイカスミがありますよね。イカスミといえばスパゲッティ。するとベネチアが頭に浮かびます。ベネチアと言えばガラス。富山にはガラスの工房がたくさんありますよね。そこでイカスミとガラスを組み合わせて「イカスミ交流」ができないでしょうか。その両者をうまくつなげるストーリーを考えたら楽しいですね。
●飛行機に乗ると、定置網の模様がとてもきれいに見えるのを知っていますか。まるでナスカの地上絵のようです。これを何らかの方法で観光化し、「海上のナスカ」として売り出したらいかがでしょう。
●北陸の雷は、他からみるとめずらしいんですよ。雷の発生は気象条件によってある程度予測ができます。これを見物してもらったらどうでしょう。それだけではお金にならないので、観光みやげ品で雷マークのハンカチを売り出します。これは体温で色が変わる布がありますから、それでつくります。雷で成功した事業というのも実際あるんですよ。
●「呉羽なし」について
梨は昔、薬材として用いられたそうで、美肌や二日酔の軽減、肝臓などにも良い効果があるそうです。これでおいしいケーキを作って、ガラス工房で食べることができる、なんてどうでしょう。
さらに、馬のトレッキングを導入して、呉羽山をめぐり、山の歴史、自然を知ってもらい、温泉に入ったついでに梨のブランデーケーキを出すというアイディアもあります。
●若い人を活かす方法としては、路地裏の見直しがあります。
このようなシンポジウムを開催しても、若者が少ないですよね。それは意欲がないからではありません。若者はもっと別の形で情報収集、発信をしているのです。
今、商店街の路地裏にはたくさんの面白い店があります。そこに集まる若者を活用するべきです。
●私の教え子には、日本語・英語・韓国語・中国語、中国語の中では広東語までしゃべることができる学生がいます。彼ら、留学生は幅広い視野を持っていますが、残念なことに 2 、 3 年で母国に帰ってしまうんですね。その能力を活かさないのは大変もったいないことです。
私は「遣富使」を提案し、富山大学でも事業化しています。ぜひ、外国人や留学生を活用してください。
●「地域の連携」を活かしてください。
たとえば、呉羽山を宣伝する場合、呉羽山だけでは弱いですよね。だからこれを「北陸の食の分岐点」として定義するわけです。さらに先程の「カツ丼層」と連携させて売り出すことにより、さらに力強い効果が期待できます。
何かを活かすためには、「人を育てる工夫を研究する」、「遊び心を持つ」、それが重要なことですね。

地域の創造方法とは。
何度も言いますが、まず、街と商品に「物語」をつくることが大切です。
街のシナリオは官と市民がつくってください。そして商品のストーリーは市民と商店街ががんばって考えてください。
そして、無駄を活かし、常識を疑ってください。
非常識が常識となり、数十億の売上を出した例はたくさんありますよね。
健康を基軸にすえるということも重要です。
富山にはいろんな食材がありますが、例えばブリを中心に健康を語ることは難しいですよね。しかし健康を語るときにブリの話はできます。
この逆の発想で、いろんなアイディアが出ます。
まず一例として、「健康」を基軸にしたとします。
駅前から商店街を緑地化し、周辺には環境産業を貼り付ける。その上でお年寄りにやさしい、健康を基軸にした商店街をつくる。若い人にはダイエットに効果ある商品を売る店がある。空き店舗を利用したアトピーや花粉症を治す施設がある。
そんな富山健康タウンの将来像が見えてきた所で、医薬大の教授に、呉羽なしの薬膳効果を語らせるというのはどうでしょうか。そこから生まれた健康に良いケーキを富山ガラスで売り出す、なんていうストーリーが生まれますよね。
こうしていくと、地域がどんどんリフレッシュして元気になり、住む人が主人公である街が出来上がっていきます。
ぜひ、遊び心を持って楽しく、たくさんのアイディアを形にしていってください。
「人には目標を、企業には利益を、地域には夢を」。
その言葉で私の講演を終わらせていただきます。
ありがとうございました。

主 催/ 株式会社まちづくりとやま
共 催/ 富山市 富山商工会議所 北日本新聞社
協 賛/ 協同組合総曲輪通り商盛会 協同組合中央通商栄会 西町商店街振興組合
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